一方、自然界におけるエラーは進化の契機となる。
私たちは、そのエラーを面白おかしく発見しながら、世界を再認識するためにフィールドワークを行う。
HUMAN AWESOME ERRORとは、流動的で有機的な活動体である。
現代、引き続きエラーだらけのテクノロジーやシステムを、人間はどのように受け入れて生きていくことが出来るだろうか。
展示詳細
Super Cell
乳がんに直面したメンバー福原志保が、がんとは何かを認識していく過程から、そもそもがんとは何なのか理解し、全ての人間が毎日のように生成しているがん細胞を再認識し、オープンソースするための活動そのものである。
“Membrane”
がんは感染したウィルスや取り込まれた毒物ではない。人間自身が生成した細胞である。この点があらゆる疾病と大きく異なっている。
ここに示しているのは人工細胞の生成モデルであり、核を半透膜で包んだSuper Cellをひたすら作り続ける。
繰り返し行われるこの過程にエラーが生じたとき、がん細胞が誕生する。
“不良息子の肖像”
がんとは通常ネガティブな言葉である。
しかしながら、摘出されても生き続けられる悪性腫瘍は再生医療の研究対象でもある。
元より、がん細胞は自身が産み落とした子供であり、患者は向き合い続けなければならない。
そのような細胞のことを福原は「不良息子」と呼んだ。
医師たちはがん細胞の性格を「顔つき」と表現する。
私たちは顔がないのに顔つきを見られる不良息子の肖像を想い描き、細胞膜のように薄い土佐典具帖紙の工芸技術によって、透き通る肖像画が完成した。
“Light In Sight”
がんと告知される人々は、どのような感情を抱くだろうか。
乳がんには2種類のインパクトがある。
1つは死の可能性に直面する不安、2つ目は、乳房を切除することによる身体のアイデンティティや美感に対する影響である。
実際にはこの2つは感情として切り別れることはなく、複雑に絡み合っている。
患者である福原志保は何かを忘れるように手元を動かしながら、細胞にも乳房にも見えるような玉を作り続けた。
がん細胞の発生はガチャのようなものかもしれない。
そこで福原が作った玉をカプセルに入れ、ガチャにて販売する。
わずかな割合で、実際の乳がんの疾患データをNFT化した作品が含まれる。
売り上げの一部は啓蒙活動を行う団体への寄付を予定。
私たちは、摘出されたがん細胞そのものに患者が所有権を持ちながら、病院が管理し続けているというエラーを発見した。
福原は主治医と病院の倫理会の許可を得て、切り取られた自身のがん細胞を凍結保存し、がん細胞をオープンソース化する試みを進めている。
がん研究の民主化と、早期発見や乳がん患者の第2の人生のために、私たちは引き続き活動を続けていく。